不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 それから数日後の深夜。わたしはヴィンセント様と共に、屋敷の広間にいた。友人たちを招いてお茶会なんかをする時に、主に使われる部屋だ。

 もっともヴィンセント様はそういった社交の集まりには縁がない、というより本人が拒んでいるので、この広間はほとんど誰も足を踏み入れない場所になっていた。掃除を担当するメイドが、時々やってくるくらいで。

『うわあ、外たいへん。雨が横に降ってる。トレ、お風呂は好きだけど雨は嫌い』

『おれはそもそも濡れるのが嫌いだ。人間の建物というものも、いいものだな』

『あれだけ風が吹くと、枝やらなにやらが飛んでくるからのう。わらわの自慢の翼に傷がつかぬよう警戒するのは、疲れるのじゃ』

 しかし今、広間はとても騒がしくなっていた。

 ネージュさんたちが上がり込んで、みんなでくつろいでいたのだ。床に敷かれた毛布の上で、思い思いに寝っ転がっている。その間を、フラッフィーズが走り回っていた。

 ネージュさんの頼みというのが、これだった。嵐が来たら、一晩屋敷に泊めてくれ。彼はそう言ったのだ。

 彼らは、天候が悪くなればあちこちに避難する。スリジエさんは空を飛んで、ネージュさんやトレは異空間を通り抜けて。

 でも今回の嵐は、結構範囲が広いらしい。かなり離れないと、安全な場所には行けないだろうと、ネージュさんたち三人の意見は一致していた。

 ネージュさんやトレは一瞬で移動できるものの、一度に移動できる距離には限りがある。遠くに行くには、何度も異空間に出入りしなくてはならないらしい。

 しかしあんまりせわしなく出入りしていると、来た道をうっかり見失うおそれがあるのだそうだ。下手をすると、ここに戻ってこられなくなるかもしれない。

 異空間にひきこもるという手もあるけれど、あそこは居心地のいい場所ではないとかで、あまり気乗りがしないらしい。

 一方スリジエさんは、嵐から逃れるためには自分の翼で地道に飛んでいくしかない。

 彼女はそこらの馬とは比べ物にならないくらいに速いけれど、それでも長距離を移動すると疲れるのだそうだ。

 散り散りに逃げて、またここに戻ってくるのは骨が折れる。それにどうせなら、屋根と壁のある屋敷で休んでみたい。三人は、そう考えたのだった。