不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「そ、そうだわエリカ。あなたが帰ってくると聞いて、お友達も駆けつけてくれたのよ。さっそく、みんなでお茶にしましょう」

 いち早く立ち直ったらしいお母様が、わたしの手を取って歩き出す。そうしてわたしは、お茶会の席に案内された。

「エリカ、久しぶりね」

「結婚してから一度も会えなかったから、寂しかったわ」

 友人たちが、そんなことを口々に言っている。かつてヴィンセント様についての様々な噂を教えてくれたのも、彼女たちだ。

 思うところは色々とあったけれど、ひとまずなごやかにお茶を飲んでお喋りすることにした。けれど、平和な時間はそう長くは続かなかった。お父様が大いに悩みながら、重々しく切り出したのだ。

「……エリカ、一つ確認させてくれ。ヴィンセント殿のお屋敷には化け物が出るという噂を聞いたのだが」

 化け物屋敷の噂は、こんなところまで届いてしまっていた。あそこには幻獣がいっぱいいるなんて、お父様は信じてくれるだろうか。

 答えに詰まっていたら、今度はお母様まで似たようなことを言い出した。

「……ヴィンセント様は、悪い噂こそあれどきちんとした方だと思ったわ。でも、化け物屋敷だなんて……恐ろしい……」

 それにつられるようにして、友人たちも次々と口を開く。

「そもそも、ヴィンセント様は戦のたびに駆り出されているのでしょう? 何度も独りきりで待ち続けるって……私だったら、辛いなあ」

「いつか帰らぬ人になるかもしれないのだし……気の弱いエリカが一人残されるなんて、心配だわ」

「それに、言ったら何だけど、あの方って平民の出でしょう? エリカと話が合うとは思えないんだけど」

 そうして、お父様がわたしをまっすぐに見つめた。やけに強い、どことなく怖い視線に思わず息をのむ。

「……エリカ。決めたよ。お前はこのまま、ここに残りなさい。離縁については、私がヴィンセント殿と話し合うから」

「我が家の繁栄とあなたの安全、そんなものを天秤にかけてしまったことを後悔しているの」

 両親がさらに口にした言葉に、ついに我慢しきれなくなった。驚きよりも、怒りのほうが勝っていた。

 背筋を伸ばし、その場の全員を順に見すえる。ゆっくりと息を吸って、口を開いた。

「わたしは、ここに残るつもりはありません。わたしの帰る場所は、ヴィンセント様が待つあの屋敷です」