不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

『ほう、いい雰囲気だな?』

『わらわたちを放置していちゃつこうなどとは、百年早いわ』

『ううん、フタリは夫婦だから、いちゃつくの当たり前』

 わたしにとってはおなじみの、たいそう楽しげなからかいの声がすぐ近くから聞こえてきた。いつの間にかわたしたちは、ネージュさんたちに囲まれてしまっていたのだ。

 ヴィンセント様が思いっきり動揺した声で、ネージュさんたちに言う。

「な、何を言っているのだお前たちは」

『何を言っているか、だと? 要するに軽口だな。ざっくり言うと、おれたちはおまえたちをからかいたいんだよ』

『その通りじゃ。まったくお主たちときたら、どう見ても好き合うておるというのに豪快にすれ違いよって。ずっと、はらはらしておったのじゃぞ? 今まで気をもまされたぶん、楽しませてもらわんとのう』

『アナタたち、仲良し。素敵。でも照れてるのも面白い』

 さらに勢いを増す三人の軽口に、ヴィンセント様はいたたまれなくなったのかぷいと横を向いてうつむいた。

 その耳がちょっとだけ赤くなっていることに気づき、彼に見えないように微笑んだ。彼の手を、やはりしっかりとにぎったまま。



 そんなこんなで、わたしたちのお喋りはさらににぎやかになった。もっとも、ネージュさんたちのずけずけとした物言いに、まだヴィンセント様はちょっぴり戸惑っているようだった。

 そうやって、とても幸せでのどかに過ごしていたある日の朝のこと。

「んん……」

 ベッドで眠っていると、やけに柔らかなものが頬に触れた。ネージュさんの毛皮もふわふわだけれど、この何かもとってもふわふわで気持ちがいい。

 そろそろと目を開けて、そちらを見る。わたしが使っている枕の上に、小さな小さな毛玉が一つ、のっかっていた。「うわあ、可愛い……」

 起き上がって、その毛玉を見つめる。やっと夜が明け始めたところで、ほのかな朝の光がその毛玉をぼんやりと照らしていた。

 その毛玉は、ヒヨコのように見えた。ふわふわでぽわぽわの羽毛、つぶらな目にちっちゃなくちばし。けれど、普通のヒヨコの半分くらいの大きさしかない。しかも、鮮やかな青色をしている。

 もしかすると、この子も幻獣かもしれない。そう思って、小声で話しかけてみる。

「……あの、おはようございます」

 しかし返ってきたのは、ぴよぴよという鳴き声だけだった。