不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 ちょっぴりいらだたしげにネージュさんは言い、それから横倒しになった。そのままくるんと体を丸め、片手でわたしを胸元に引き寄せる。

『ほら、特別におれの胸を貸してやる。今だけ、布団代わりにしていいぞ』

「あ、ありがとう、ございます……」

 ネージュさんのとってもふわふわな胸毛の上に寄りかかりながら、礼を言う。そんなわたしに、ネージュさんは穏やかに語りかけた。

『空を見てみろ。あいつも今ごろ、帰りの馬車の中からあの空を見ているさ。心配せずに、昼寝でもして待てばいい』

『お花の匂い、落ち着くよ』

 トレの声にそろそろと視線を動かすと、トレがすぐ近くの草地で跳ねているのが見えた。あっという間に、草地が色とりどりの花畑に姿を変える。

『これは見事な花畑じゃ。トレよ、お主はいつも珍かな植物を生やしておるな。見ていて飽きぬ』

『トレが作ってるの。どんな花にするか、全部トレが決めてるの』

『なるほどのう。お主は趣味が良い。誇ってよいぞ』

 二人がなごやかに話している声を聞いていたら、ゆっくりと眠気が襲ってきた。そういえばここ数日、ヴィンセント様のことが心配であまり眠れていなかった。

 お日様の匂いがするネージュさんの毛の匂いを感じながら、目を閉じる。

 きっとこれからも、幾度となくこんな風にヴィンセント様の帰りを待たなければならないのだろう。わたしはこの状況に慣れなくてはいけない。彼の妻として、彼の帰る場所を守るために。

 でも今だけは、ネージュさんたちの優しさに甘えよう。そうやって少しずつ、慣れていこう。

 そんなことを考えながら、ゆっくりと息を吐いた。



 そうして、ヴィンセント様が出陣してから十六日目の夜。

「おかえりなさい、ヴィンセント様!」

 ようやく、彼は戻ってきてくれた。見たところ怪我もしていないようだ。安堵のあまり崩れ落ちそうになるのを必死にこらえて、にっこりと笑いかける。

 しかしヴィンセント様は、心配になるくらいに思いつめた顔をしていた。