不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 そんなことがあってから、一週間ほどが経った。

「ヴィンセント様、そろそろ息抜きはいかがですか」

 今日ヴィンセント様は、朝から部屋にこもっている。片づけなければならない書類仕事があるのだ。

 何か手伝えることはないかと申し出たのだけれど、気持ちだけありがたく受け取っておくと言われてしまった。

 だったらせめて、息抜きの手伝いくらいはできないかと思って、お茶をいれてきたのだ。

 お茶うけのお菓子はまだ一人では作れないので、リンゴをむいて一緒に持ってきた。喜んでもらえるといいなと、どきどきしながら。

 そうして、ワゴンを見たヴィンセント様は嬉しそうに笑ってくれた。

「ああ、ちょうど一段落ついたところだ。ありがとう、エリカ」

 それから二人でお茶を飲む。ちょっとぶかっこうなリンゴも、ヴィンセント様は褒めてくれた。優しいなあ。

「そういえば、このところ幻獣たちはすっかり屋敷に居ついてしまったな」

 なごやかなお喋りの合間に、ふとヴィンセント様がそんなことをつぶやく。わたしも小さく笑いながら、視線を窓の外に移した。

「そうですね。今も、そこに一人」

 そこには、大きな桜色の影があった。花が咲き乱れる中庭で、スリジエさんが優雅に翼を伸ばしている。その隣には馬屋番が立ち、彼女の体にブラシをかけていた。

「翼馬は、中庭が気に入ったようだな」

「見事な花がたくさん咲いていて、自分の姿がよく映えるって言ってました。それを庭師に伝えたら、まんざらでもなさそうな顔をしていました」

「それに馬屋番も、翼馬のことが気に入っているようだな。とても丁寧な手つきだ」

 二人で中庭を眺め、笑い合う。

「あ、さっきテラスでネージュさんを見かけました。元の大きさのまま、あおむけになって寝転んでましたよ。地面と違って毛が汚れないから、ひなたぼっこにはちょうどいいんだそうです」

「それは……メイドたちが驚くのではないか?」

「もうみんな慣れてしまってます。子犬でも見るような目をしてましたよ」

 そう言うと、ヴィンセント様はうつむいて肩を震わせた。笑いをこらえているらしい。

「あと、トレは中庭の水路に浸かってました。まるでお風呂に入っているような顔で。気持ちいいんだそうです」

 いたずら心を起こして、淡々とそう告げてみる。ヴィンセント様は下を向いたまま、んんっと小さく声を上げた。さすがに笑いを我慢しきれなかったらしい。

 使用人のみんなが不安になっていると知った時はどうしようと思ったけれど、どうにかこうにか落ち着いた。こうしてのんびりとお茶を飲んでいられる幸せをかみしめる。

 その間もヴィンセント様は、まだ肩を震わせていた。