やがて、今日のお昼ご飯ができあがった。わたしが生まれて初めて焼いたベーコンエッグ、ヴィンセント様が作ってくれたサラダとマッシュポテト、それにパンと果物。いつもの昼食より質素だけれど、とってもおいしそうだ。
それらの皿がずらりと並んだ食卓をうっとりと眺めていると、隣の厨房からヴィンセント様が現れた。両手に皿を持って。
「……それと、これも」
彼が手にしていたのは、小ぶりのオムレツだった。二つの皿に一個ずつ、ちょこんと乗っている。
「君が割り損ねた卵で作った。口に合うといいが」
きれいにまとまったそのオムレツには、刻んだ玉ねぎとチーズらしきものが混ぜられている。とってもいい匂いだ。すごい、あの卵がこんな素敵なものになるなんて。
「うわあ、とってもおいしそうです……お腹、すいちゃいました」
「ああ、それでは食事にしようか」
そうしてとてもなごやかな空気の中、二人っきりの食事が始まった。
「このサラダ、知らないハーブが入っていてとってもおいしいです。トウモロコシの入ったマッシュポテトも初めてです。ぷちぷちして面白い……」
「どちらも俺の故郷では普通に食べられていたものだが、気に入ってもらえてよかった」
そう言ってヴィンセント様が、ベーコンエッグを一口食べる。どきどきしながら見守るわたしに向かって、彼はゆっくりとうなずいてくれた。
「ああ、こちらもよくできている。初めてだとは思えない」
「あ、ありがとうございます……」
その一言がとても嬉しくて、泣きそうになってしまった。目元を押さえてうつむくと、ヴィンセント様のおろおろした声が聞こえてきた。
「頼む、泣かないでくれ。そ、それに食事が冷める」
「は、はい」
頑張って涙を引っ込めて、今度はオムレツを食べてみた。ふわふわの卵、さくっとした玉ねぎ、コクのあるチーズ。
「これも、とってもおいしい……ヴィンセント様って、本当にすごいです」
わたしの言葉に、ヴィンセント様は小さく咳払いして視線をそらした。照れくさそうな表情で。
「その、余りものや細切れの食材で料理をするのは得意だ。だから君がまた失敗しても、俺はそれをちゃんとした料理に作り変えてみせる。無駄にはしない」
こちらを見ないまま、ヴィンセント様は続けた。
「だから、その……これからも、安心して料理に挑戦するといい。……君と厨房に立つのは、楽しかった」
少し遅れて、言葉の意味が理解できた。ヴィンセント様も、わたしと一緒に料理することを楽しいと思ってくれていたのだ。
「はい!」
だから明るくそう答えて、もう一口オムレツを食べた。なんだかさっきよりもさらに、おいしく思えた。
それらの皿がずらりと並んだ食卓をうっとりと眺めていると、隣の厨房からヴィンセント様が現れた。両手に皿を持って。
「……それと、これも」
彼が手にしていたのは、小ぶりのオムレツだった。二つの皿に一個ずつ、ちょこんと乗っている。
「君が割り損ねた卵で作った。口に合うといいが」
きれいにまとまったそのオムレツには、刻んだ玉ねぎとチーズらしきものが混ぜられている。とってもいい匂いだ。すごい、あの卵がこんな素敵なものになるなんて。
「うわあ、とってもおいしそうです……お腹、すいちゃいました」
「ああ、それでは食事にしようか」
そうしてとてもなごやかな空気の中、二人っきりの食事が始まった。
「このサラダ、知らないハーブが入っていてとってもおいしいです。トウモロコシの入ったマッシュポテトも初めてです。ぷちぷちして面白い……」
「どちらも俺の故郷では普通に食べられていたものだが、気に入ってもらえてよかった」
そう言ってヴィンセント様が、ベーコンエッグを一口食べる。どきどきしながら見守るわたしに向かって、彼はゆっくりとうなずいてくれた。
「ああ、こちらもよくできている。初めてだとは思えない」
「あ、ありがとうございます……」
その一言がとても嬉しくて、泣きそうになってしまった。目元を押さえてうつむくと、ヴィンセント様のおろおろした声が聞こえてきた。
「頼む、泣かないでくれ。そ、それに食事が冷める」
「は、はい」
頑張って涙を引っ込めて、今度はオムレツを食べてみた。ふわふわの卵、さくっとした玉ねぎ、コクのあるチーズ。
「これも、とってもおいしい……ヴィンセント様って、本当にすごいです」
わたしの言葉に、ヴィンセント様は小さく咳払いして視線をそらした。照れくさそうな表情で。
「その、余りものや細切れの食材で料理をするのは得意だ。だから君がまた失敗しても、俺はそれをちゃんとした料理に作り変えてみせる。無駄にはしない」
こちらを見ないまま、ヴィンセント様は続けた。
「だから、その……これからも、安心して料理に挑戦するといい。……君と厨房に立つのは、楽しかった」
少し遅れて、言葉の意味が理解できた。ヴィンセント様も、わたしと一緒に料理することを楽しいと思ってくれていたのだ。
「はい!」
だから明るくそう答えて、もう一口オムレツを食べた。なんだかさっきよりもさらに、おいしく思えた。

