不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 二人と、あとヴィンセント様が何を隠していたのかは、その日の夕方に明らかになった。

「……その、また料理を作った。夕食だ」

 いつも以上にこわばった顔のヴィンセント様に連れられて、食堂に向かう。そこには、二人分の料理が並べられていた。

 普段の食事は、貴族のしきたりにのっとって、小ぶりの皿に乗せられた料理が順に出されていく。でも今目の前には、たっぷりと料理が乗った大きな皿が置かれていた。

「あっ、これってお魚ですか?」

「ああ。白身魚に香草を混ぜた衣をつけて、揚げ焼きにしてある」

「それと、そっちの皿にあるのはパイですか?」

「そうだ。中のリンゴは大きく切って、食感を残してある」

 ヴィンセント様は淡々と、冷静に答えている。けれどその青灰色の目は、どことなく自信なさげに泳いでいるようだった。

「あの……もしかして、なんですけど……朝にわたしの好物を聞いてきたのと、関係があるんですか?」

「…………ああ」

「わあ、嬉しいです! ありがとうございます!」

 わたしの好物を、わざわざ作ってくれた。そのことがとても嬉しくて、ついはしゃいでしまう。

 ヴィンセント様は小さく苦笑して、食卓の上を指し示した。

「ひとまず、食事にしよう。冷めてしまう」

 そうしてわたしたちは一緒に席について、用意された料理を口にする。

「……とても、おいしいです。いつも食べているものと、香草の使い方も料理の仕方も違いますけれど、とっても優しい味で……わたし、これ大好きです」

 そう言うと、ヴィンセント様は口を開きかけ、そしてまたすぐに口を閉ざしてしまった。

 気のせいか、さっきからヴィンセント様の様子が妙だった。何か言いたそうにしているというか、やけに緊張しているというか。

 仕方なく、食事をしながらあれこれと話しかける。ヴィンセント様は返事をしてくれたけれど、やはりどことなく生返事だった。

 そうして食事を終えて、自室に戻ろうとする。そうしたら、声をかけられた。

「その、俺の部屋に来てくれないか。……少し、話がある」

 もちろん、断る理由などなかった。すぐにうなずいて、彼に続く。