不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

『……まったくあやつらは、似た者同士にもほどがあるわ。二人して不器用で、もどかしくなるくらいに気を遣い合って、あげくにすれ違うなどとは、のう』

『ある意味、とても似合いの夫婦だよなあ』

 そうつぶやいたネージュが、ふとにやりと人の悪い笑みを浮かべる。真っ白な毛に覆われた鼻面をスリジエの耳元に寄せて、楽しげに言った。

『ああそうそう、どこからどう見ても惚れ合ってるあの夫婦だが、たぶん惚れたのはヴィンセントのほうが先だぞ』

『ほう? どうしてそう思うのじゃ、詳しく聞かせてたもれ』

 スリジエが耳をぴんと立てて、淡い金色の目を輝かせてネージュの目をまっすぐに見る。

『エリカが嫁いできたその日の夜に、あいつはおれのところを訪ねてきたんだ。追い返そうとしたのにうまくいかなかった、どうしようっておろおろしながら』

『想像できるような、できぬような……』

『あいつは愚痴がたまると、おれのところに吐き出しに来る。聞いていて面白いから、好きにさせてやっているんだが……あの日は飛び切り、愚痴が多かったな。あれはすごかったぞ』

 そうしてネージュは、ヴィンセントがその時に愚痴っていた一部始終をスリジエに語って聞かせた。スリジエは目を細め、あきれたような顔で言う。

『……その愚痴をそっくりそのままエリカに話してやれば、すぐに解決するのではないかの? それではまるで、一目惚れではないか』

『だよなあ。けれど、そう単純な話でもないだろう。それにおれは、告げ口するような真似はしたくない。おまえも他言無用だからな』

『ふむ、まあお主の言う通りにしてやろう。もっとじっくりと時間をかけて、あの二人をくっつけるのも面白そうじゃしのう』

『そういうことだ。まあ、もうおれたちの手助けは必要ないような気もするがな』

『かもしれんの。だがそれならそれで、ゆったりと見物する楽しみがあるというもの』

 白くて長い毛のとびきり大きな狼と、優美な翼を垂らした桜色の馬のお喋りは、それからもしばらく続いていた。