不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「もちろんじゃ。しかしあやつらの屋敷に今から向かっても、間に合わんじゃろうし……そもそもわしに気づけば、あやつらはいつも通りに取り繕った顔をするじゃろうし」

『よし、王。おれに命じろ。おまえは偉いんだろう? 今だけ、おれはおまえの命令を聞いてやろう』

 その言葉で、王はネージュの言いたいことを察したらしい。打って変わって重々しい声で、低く言い放った。

「ならば、命じよう。白く気高き幻獣ネージュよ、わしを彼らの屋敷に、彼らに見つからぬように連れてゆけ」



 ネージュは王を背に乗せ、そばの大鏡に飛び込んだ。鏡の異空間を通り抜け、ヴィンセントの屋敷の裏手の森に姿を現す。

「鏡を通って、不思議な空間を抜け、そうして泉から出てくる、とな……たっぷり二十年分は驚かされたわい」

『しっ、声をひそめろ。ヴィンセントたちがこの森に来ているかもしれない』

 また小さくなったネージュはしばらく空気の匂いをかいでいたが、やがて大きくうなずいた。

『……大丈夫そうだ。あいつら、屋敷にいるらしい』

 そうして二人は、周囲を警戒しながら進んでいった。遠くにちらちらと見える屋敷の窓越しに、人影が見えている。

 ネージュと王は、屋敷に近づきすぎないように気をつけながら、手頃な茂みに身を隠した。

「おお、いい感じに二人が見えるのう」

『しかも二人とも、こちらに気づいていない。好都合だ』

 二人の視線の先には、とても親しげに、楽しそうに笑い合うヴィンセントとエリカの姿があった。

「幸せそうじゃな……見ているこちらの胸まで、温かくなるような」

『そうだな。わざわざおまえと手を組んで、こんな手の込んだことをしたかいがあった』

 とても初々しい、そして仲睦まじい夫婦を、ネージュと王はゆるみきった顔でじっと見守り続ける。

 と、ネージュがふと眉間にしわを寄せた。