不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「わしも、あの二人のことはずっと気にかかっておったのでな」

 王はネージュの姿をうっとりと眺めながら、そうつぶやく。

「ヴィンセントに伯爵の位を与えることにしたことを、後悔はしておらぬ。だが、あやつがああもかたくなに妻を拒むとは、思ってもおらなんだのじゃ」

『そうだな。あいつはエリカが来ると決まってから、毎日毎日愚痴を垂れ流していた。おれはあいつとそこそこ長い付き合いだが、あいつにあんな一面があるなんて思いもしなかった』

 すぐ近くで見上げる王の顔をまっすぐに見返しながら、ネージュはしんみりと言った。

『……まあ、それもあいつなりの優しさではあったんだがな。いつ戦死するかもしれない自分と夫婦になったら、相手の女が不幸になる。あいつはそう考えていた』

「なるほど、あやつはそんなことを考えておったのか……なんとも、不器用な男じゃのう」

『そうだな。だがおれは、あいつのそういうところを気に入っている』

「わしもじゃよ」

 今の今までしんみりとしていた二人が、同時ににやりと笑った。

『なんだおまえ、気が合うな』

「そういうお主こそ」

 それをきっかけに、二人の話題はがらりと変わっていった。二人はそれぞれの知るヴィンセントの思い出を、互いに語り合い始めたのだ。

『それでだな、その時あいつは……』

「ほうほう……」

 謁見の間の豪華なじゅうたんに二人して座り込み、顔を突き合わせて話し込む。

 やんちゃな子供たちがいたずらの計画を練っている時のような、お喋りな女性たちが噂話に花を咲かせている時のような、そんな様子だった。

「うむ、お主と話しておるのはたいそう楽しい。何より、その率直な態度が楽でよいわ。人ならぬものと話せる魔法の耳飾りをもう一組引っ張り出してきたのは、正解じゃった」

『ああ、その耳の金色のやつだな。ヴィンセントとそろいの』

「そうとも。貴重な品ゆえに、わしとてそうやすやすとは持ち出せんのじゃ。おかげで、大臣たちに渋い顔をされたがの」

 王はそう言って、からからと晴れやかに笑う。しかしすぐに、難しい顔をした。

「しかし、こうなると気になるのう。あの二人、どうしておるかのう……」

 遠くを見るような目で、王はため息をつく。その姿を見て、ネージュはふと何かを思いついたような顔をした。

『……なあ、王。おまえ、あいつらが今どうしているか、見てみたいか?』