不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 ネージュたちは幻獣たちを集め、事情を説明した。幻獣たちはみんな快く、屋敷を一時離れることに同意したのだった。

 そうして意気揚々と屋敷を発ったネージュたち幻獣一同は、なんと王宮の中庭に集まっていた。

『よし、それではここからは自由行動だ。空の色が変わり始めたら、またここに集まれ』

『ほかのヒト、おどかしたらダメ。こっそり隠れて、人間見物。ここでのんびりするの、結構面白い』

『隠れておる自信のない者は、わらわについておれ』

 ネージュたちがそう言い終わると同時に、幻獣たちはあちこちに散っていた。

 トレと一緒に中庭でくつろぐ者、スリジエと一緒に王宮の中をふらふらしにいく者、好き勝手に王宮や城下町に散っていく者。

 それらを見届けて、ネージュはすっと息を吸う。犬くらいの大きさにまで縮んだ彼は、一人とことこと廊下を歩いていった。



『約束通り、遊びに来たぞ』

 異様に大きく、豪華な装飾のついた鏡から、小さなネージュがぬるりとすべり出てくる。それからすぐに、元の大きさに戻った。長くしなやかな白い毛が、ふわりとなびく。

「おお、待っておったぞ」

 ここは謁見の間。そしてネージュを出迎えたのは、何と王その人だった。彼は玉座から立ち上がり、いそいそとネージュに歩み寄ってくる。

『しかし、おまえも変わった人間だな。王というのは、人間の中でも立場が上で、偉いのだろう? それなのに、人ですらないおれの願いをあっさり聞き入れるとは』

 ネージュが言っていた協力者とは、王のことだった。ヴィンセントとエリカ以外で、彼らと意思疎通できる人間を、ネージュは他に知らなかった。

 だから彼は、駄目で元々と王のところをこっそり訪ね、思うところを述べてみたのだ。あのもどかしい夫婦を何とかしたい、そのために使用人たちを一日でいいから留守にさせたい、と。

 王は大変乗り気で、すぐに手紙をしたためてくれた。二人の暮らしぶりについて聞きたいから、使用人たちみなで王都に来てくれ、と。しかも王は、迎えの馬車まで用意してくれたのだ。

 使用人たちは今朝一番にヴィンセントの屋敷を発ち、王と話した後は城下町を思い思いに散策している。彼らは王の命令で、今日は一日休暇を取らされていた。

 どのみち、ヴィンセントもエリカも家事はできる。使用人が昼間の間ずっと留守にしていても、何も困らないのだ。