不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「しばらく、考えさせてもらってもよろしいでしょうか。今すぐには、思いつきません。……私も妻も、今とても満たされ、幸せですから」

 その言葉に、陛下はにっこりと笑った。心底ほっとしたような、そんな笑顔だった。

「そうか、良かったのう。……わしはずっと、お主の働きに応えたかった。そうして思いつくまま、お主に色々なものを与えてきた。しかしそれは、お主にとっては余計な重荷だったのかもしれない。そのことが、ずっと気にかかっていたんじゃ」

 ヴィンセント様はその剣の腕で数々の戦を勝利に導いた。そして陛下はそんな彼に男爵の、そして伯爵の地位を与えられた。

 けれどそれにより、ヴィンセント様は貴族たちの悪意にさらされることになった。きっと陛下は、そのことをおっしゃっておられるのだろう。

 しんみりとつぶやいていた陛下が、また笑った。今度の笑みは、ネージュさんたちに向けられていた。

「欲しいものが決まったら、いつでも来るがよい。幻獣たちも連れてな。幻獣たちよ、わしはお主たちを心から歓迎する。気が向いたら、ぜひ遊びに来てくれ」

『うん。王宮の庭、面白そう。あっ、トレはトレっていうの』

『そういえば、名乗りがまだだったな。おれはネージュ』

『スリジエじゃ。よろしく頼むぞ、人間の王』

 そんな陛下と幻獣たちを、わたしとヴィンセント様は静かに見守っていた。



 王宮での用事も全て終わったので、いよいよ屋敷に帰ることになった。しかし馬車の手配をしようとしていたところ、ネージュさんたちに止められた。

『おれたちに任せろ。そのほうが早い』

 そうして彼らは、あっという間に帰り支度を整えてしまった。

 トレとフラッフィーズは異空間を通って、一足先に屋敷に戻る。

 わたしとヴィンセント様はネージュさんに乗って、鏡の異空間を通ることになった。少しだけある荷物はスリジエさんに運んでもらう。

『わらわだけは、どうあっても自分の翼で飛んでいくほかないからの。人を乗せておってはゆっくり進むしかないが、ただの荷物だけなら遠慮せずに飛べるわ。行きよりも、ずっと早く戻ってみせようぞ』

 そうしてわたしとヴィンセントは、ネージュさんと一緒に王宮の大広間に向かった。そこに、とびきり大きな鏡があるのだ。

 わたしたち三人で、鏡の前に並んで立つ。

『それじゃあ、戻ろうぜ』

「ああ、よろしく頼む、ネージュ」

「……やっと、みんなで家に帰れるんですね」

 そうつぶやいた自分の声が、泣きそうに震えている。いけない、こんなところで泣いちゃったら。一生懸命にこらえていたら、肩に手が置かれた。

 見上げると、優しく微笑むヴィンセント様の顔。胸がぎゅっと苦しくなるのを感じながら、こくんとうなずいた。彼の手に自分の手を重ね、ぎゅっとにぎりしめる。

 そうしてそのまま、よりそっていた。鏡の中のわたしたちは、とても幸せそうな顔をしていた。