不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 中庭で話し込むわたしたちに、ヴィンセント様が歩み寄ってきた。

『おや、ずいぶんと早い出迎えじゃの。ほれ、これで見えるようになったじゃろう』

「ああ、助かる、スリジエ。そろそろ来る頃だろうと思って、ここで待っていたんだ」

『気味が悪いくらいすぐにやってきたな、おまえ』

「あの知らせを聞いたら、きっとお前たちはすぐにここに向かってくると、そう思ったからな。トレの移動方法から考えて、おそらく待ち合わせは中庭だ。この一角は特に日当たりが良くて、トレが隠れられそうな草むらもある」

 愉快そうに笑いながら、ヴィンセント様がそう解説してくれた。

「そう当たりをつけて、この辺りを遠くから眺めていた。そうしたら、トレがにょっきり生えてきたんだ。声をかけようか迷っていたら、そのまま寝てしまってな。だから俺も、ここで待つことにしたんだ」

 そう言って笑うヴィンセント様を見ていたら、もういても立ってもいられなくなった。スリジエさんの背を滑り降りて、ヴィンセント様に駆け寄る。

「お久しぶりです、ヴィンセント様!」

 ヴィンセント様に会えた。それが嬉しくて、彼の手を取り、頬をすり寄せる。本当は抱き着きたかったけれど、ここはわたしたちの屋敷ではないから駄目だ。

「エリカ、王宮でそんなふるまいは……それに久しぶりも何も、まだ離れて一週間ほどで」

『新妻を一週間もほったらかしにしておくお主が全面的に悪いのう』

 照れているのか視線をそらすヴィンセント様を、スリジエさんがぴしゃりとはねつけた。

『そうだな。伝書鳩を飛ばすなら、ついでに恋文の一つも送ってやれ』

『手紙じゃなくて、ヴィンセントが言いにくればいいのにってトレ思った』

 ネージュさんとトレも、やいのやいのとはやしたてている。フラッフィーズがぱたぱたとヴィンセント様のところに飛んでいって、彼の髪をくわえて引っ張っていた。

 幻獣たちに好き勝手されて戸惑っているヴィンセント様が、なんだか可愛らしく見えた。

「ヴィンセント様にはヴィンセント様の立場があるって、分かっていますから。……でも恋文は欲しかったなって、そう思います」

 彼の手をしっかりとにぎったまま、彼の顔を見上げる。その間も、幻獣三人は元気に騒ぎ続けていた。フラッフィーズがまた増えて、わたしたちの周りをぐるぐると飛び回っている。

「そう、か。……善処する」

 そのままヴィンセント様と見つめ合う。ここが王宮の中庭だってことも忘れそうなくらいに、幸せな気分だった。