『人間の王がおれたちに会いたいだとはな。おかしなこともあるものだ』
『呼びつけられるのは少々気に食わぬが、まあ大目に見てやろうかのう。うむ、それではその王とやらの顔を拝んでやろうぞ』
『お城、トレ行ったことない。気になる』
三人はあっという間にそう決め、口を挟む隙すら与えずに動き出した。
スリジエさんがかがみこみ、背に乗れとせかしてくる。ネージュさんが小さくなって、その横にちょこんと座っている。トレは大きく伸びをして、花壇の中にぴょんと飛び込んで消えた。フラッフィーズがぱたぱたと飛んで、わたしの肩に乗る。
前に屋敷を発った時とはまるで違う、穏やかで楽しい空気。
それを嬉しく思いながら、いったんその場を離れる。屋敷のみんなに、ちょっと出かけてきますと伝えるために。
王都まではそう遠くない。少なくとも、この間の戦場よりはずっと近い。
スリジエさんは本気を出せば馬車の十倍近い速さで飛べる。でものんびり飛んでいても、馬車よりもずっと速い。
わたしはネージュさんを抱きかかえ、スリジエさんの背に乗って髪をなびかせていた。お喋りの続きをしながら進んでいると、あっという間に王都が見えてきた。
『さすがに、民草にわらわの姿を見られると大騒ぎになりそうじゃのう。見えずの霧をまとって、一気に駆け抜けるかの』
そう言って、ネージュさんは軽やかに王都の上空を駆け抜ける。遥か下で、人々が行きかっているのが見える。普通に生きていたら、こんな位置から町を眺めることなんてまずない。
珍しい光景に目を見張っていると、スリジエさんが高度を上げた。そのまま、城を取り囲む塀をあっさりと越えてしまう。
『さて、トレとは中庭で落ち合う約束じゃったのう。しかし中庭といっても、ずいぶん広いものじゃな』
『あっちだ、南西の角の木の下。そこからあいつの匂いがする』
ネージュさんの指示に従い、中庭の一角に降り立つ。明るい黄緑色の茂みの中に、トレは見事に溶け込んでいた。
『トレ、ここでこっそり昼寝してたの。でもスリジエ速い。もっと寝たかった』
大きくあくびをして、トレはスリジエさんの足元に移動して、見えずの霧の中に入り込んだ。
『さて、次はヴィンセントを探さぬとなあ』
「探さずとも、俺はここにいるぞ。すまないが、見えずの霧を消してくれないか」
『呼びつけられるのは少々気に食わぬが、まあ大目に見てやろうかのう。うむ、それではその王とやらの顔を拝んでやろうぞ』
『お城、トレ行ったことない。気になる』
三人はあっという間にそう決め、口を挟む隙すら与えずに動き出した。
スリジエさんがかがみこみ、背に乗れとせかしてくる。ネージュさんが小さくなって、その横にちょこんと座っている。トレは大きく伸びをして、花壇の中にぴょんと飛び込んで消えた。フラッフィーズがぱたぱたと飛んで、わたしの肩に乗る。
前に屋敷を発った時とはまるで違う、穏やかで楽しい空気。
それを嬉しく思いながら、いったんその場を離れる。屋敷のみんなに、ちょっと出かけてきますと伝えるために。
王都まではそう遠くない。少なくとも、この間の戦場よりはずっと近い。
スリジエさんは本気を出せば馬車の十倍近い速さで飛べる。でものんびり飛んでいても、馬車よりもずっと速い。
わたしはネージュさんを抱きかかえ、スリジエさんの背に乗って髪をなびかせていた。お喋りの続きをしながら進んでいると、あっという間に王都が見えてきた。
『さすがに、民草にわらわの姿を見られると大騒ぎになりそうじゃのう。見えずの霧をまとって、一気に駆け抜けるかの』
そう言って、ネージュさんは軽やかに王都の上空を駆け抜ける。遥か下で、人々が行きかっているのが見える。普通に生きていたら、こんな位置から町を眺めることなんてまずない。
珍しい光景に目を見張っていると、スリジエさんが高度を上げた。そのまま、城を取り囲む塀をあっさりと越えてしまう。
『さて、トレとは中庭で落ち合う約束じゃったのう。しかし中庭といっても、ずいぶん広いものじゃな』
『あっちだ、南西の角の木の下。そこからあいつの匂いがする』
ネージュさんの指示に従い、中庭の一角に降り立つ。明るい黄緑色の茂みの中に、トレは見事に溶け込んでいた。
『トレ、ここでこっそり昼寝してたの。でもスリジエ速い。もっと寝たかった』
大きくあくびをして、トレはスリジエさんの足元に移動して、見えずの霧の中に入り込んだ。
『さて、次はヴィンセントを探さぬとなあ』
「探さずとも、俺はここにいるぞ。すまないが、見えずの霧を消してくれないか」

