不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 そうして屋敷に戻り、またヴィンセント様の帰りを待ちながら過ごす。

 けれど前のように、不安でたまらなくなることも、落ち着かずに裏の森に駆け出すこともなかった。だって、ヴィンセント様が無事に戻ってくることは、もう分かっていたから。

 でもやっぱり、わたしは裏の森にいた。ヴィンセント様が帰ってくるのが待ちきれなくて、みんなでお喋りすることでその気持ちをまぎらわせようとしたのだ。

「ヴィンセント様、いつ戻られるかな……」

『もうしばらくかかるだろうな。軍というのは人数が多いせいか、歩みはあまり早くない。あいつに初めて出会った後、しばらく面白半分について歩いたが、あまりの遅さにあきれたものだ』

『それに、空を進めるわらわと違って、あやつらは地道に歩いていくほかないからのう』

 綺麗な桜色の翼をぴんと伸ばして、スリジエさんがつぶやく。

『あやつが帰ってきたら、またみなで遠出というのはどうかの。もちろん、敵の兵士などおらぬ平和な場所に。花畑もいいが……温泉などもよいと思うぞ』

『温泉、行く? トレ、いいところ知ってる』

 ここ数日は、ずっとこうやって過ごしていた。

 みんなで中庭に集まり、日なたぼっこをしながらだらだらとお喋りをする。そしてそのお喋りは、気づくといつも同じところに向かっていくのだ。

 ヴィンセント様が戻ってきたら何をしよう、どこへ行こう。みんなのそんな思いつきは、どんどん具体的になり、しかも数を増していった。

 帰ってきたらしばらくは、ヴィンセント様はあっちこっちに引っ張り回されるんだろうな。既に海岸と、雪山と、温泉に遊びにいく計画が立ってしまっている。

 ネージュさんたちは、何がなんでもヴィンセント様を連れていくだろう。もちろん、わたしもついていく。

 きっとヴィンセント様は、大いに戸惑いながらも、その旅を楽しんでくれるんだろうな。そのさまを想像してくすりと笑ったその時、一羽の鳩がわたしたちの目の前に舞い降りてきた。

「この子って……伝書鳩?」

 鳩の足には、小さな筒がくくりつけられている。その筒を慎重に足から外し、中身を取り出す。

『もしかしてこれは、ヴィンセントの字か? 読めないが、見覚えがある』

「読みますね。ええと……『エリカ、ネージュたち三人とフラッフィーズを連れて、王都まで来てくれ。陛下が、君と彼らに会いたいとおっしゃっておられるんだ』だそうです」

 その言葉に、さすがのネージュさんたちも驚いたらしい。みんな黙って、顔を見合わせている。

 しかし次の瞬間、一斉に笑い出した。