夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

　皆が驚いて莉愛を見た。

「あ、あの……花邑さんとの政略結婚は無理やりで……本当に嫌だったんです。でも祐樹さんはいい人だし、好きだから全然違う……あ……ごめんなさい……」

　莉愛はハッと気づいたように社長と夫人を見て、真っ赤になると両手を口にやってすとんと座った。くすくすと社長の奥様が笑っている。社長は苦笑いを浮かべた。

「よかったな、祐樹。どうやら、お前の一方通行ではないようだ」

「なんだよそれ……彼女はプロポーズに応じてくれたと話しただろう？」

「いや、花邑との結婚が嫌だからしょうがなく応じたのかと思っていたからね。彼女は急いで結婚する必要はないと言っているんだし、あまりこの話に前向きじゃないんだろうと推測したまでだ。お前が囲い込みたがっているだけじゃないのか」

「まあ、莉愛は僕が千堂の息子でここの養子だと聞いた時から冷たい態度をとったからね」

「それはその、大事なことなのに、プロポーズの時は黙っていたからじゃないの……」

「なるほど。祐樹が二つの会社の社長の息子であることに、本山さんは特段魅力を感じてないんだな」

「すみません。最初から身分違いなんです。社長のお気持ちはよくわかります。だから……」

「莉愛！僕は君と絶対結婚する。君の懸念は理解できるけど、僕を信じてほしい。僕があらゆる問題から必ず君を守ると約束する」

「ほら、二人ともいい加減にしなさいな。お茶でも飲んで落ち着きましょう」

　すると、奥さんがお茶とお菓子を出してきた。

「あなたもそろそろいいでしょ。社長の仮面を外して父親の仮面に付け替えて頂戴。子供を持ったことがないから常に社長としてしか息子と付き合えないんじゃ、彼女に呆れられるわよ。本山さん、主人が初対面なのに色々と不躾に失礼なことを言ってごめんなさいね」

「あ、いいえ……」