夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「……えっ……」

「僕はいい加減な気持ちで君にプロポーズしたわけじゃない。君を手に入れることがゴールで、僕にとっては取引の苦労など過程でしかない」

「……祐樹さん……」

「今の言葉が本心なら、君が僕に墜ちてこないのは僕に力がないからだな。周りに反対されているが、さっきも言った通り想定内だ。莉愛がそのことで僕への気持ちを捨てるのはやめてほしい」

　莉愛は顔をあげて涙を拭いた。祐樹は莉愛のおでこにキスを落とした。

「あっ……」

　祐樹はにっこりと笑った。

「赤くなったな、かわいい……。莉愛、僕を信じてくれないか？」

「え？」

「必ず何とかする。僕の手腕を見ていてくれ」

「つ、付き合うだけじゃだめ？結婚は無理をしないでほしいの。お願い……祐樹さんの立場が悪くなる……」

「立場ね……これ以上は悪くならないと思うけどね。そんな心配しなくてもいい。連絡しなかったから心配してるんだろ？僕はね、やると決めたら時間がかかろうとやる。設計図はすでにできてる。君を妻にするまでは諦めないよ」
　
　祐樹はニヒルに笑った。莉愛は声が出なかった。

　この人のこの自信満々な姿に莉愛は振り回されている自覚があった。何を言っても無駄だと思った。

　今の莉愛はとにかく祐樹についていくしかない。でも暴走する彼を止める権利は自分にしかないと心に決めた。

「まずは仕事のことからだ。君には海外事業部の正社員として、猛勉強から頼むぞ」