夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「先日、君のことを話したら佐伯の父が君を連れてこいと言うんだ。聞きたいことがあるらしい。おそらく、何か言われるかもしれないが、心配しなくていい。佐伯の母も同席すると言ってくれたから大丈夫だと思う」

　莉愛はため息をついた。無理がありすぎる。

　結婚は絶対許してもらえないだろうと今の話でなんとなく想像がついた。

「祐樹さん……結婚は……いったん白紙にした方がいいと思う」

「どうして？」

「うちのことはお陰様で落ち着いたし、私の結婚について外から決められることはもうないと思うの。だからとりあえず、正社員として働ければ……」

　祐樹の目が細くなり、莉愛を刺すように見つめた。

「……君は……やはり僕に興味がないんだな。もしや、本当に縁談が破棄できればそれでよかったのか？」

「そんなわけないじゃない……どうしてそんなこと言うの……」

　莉愛は顔を覆ってしまった。責めるような祐樹の目を見て悲しくて涙が出た。

　興味がないどころじゃない。連絡がない間どれほど彼のことで頭がいっぱいだったか、彼のことを意識している自分を認識した一週間だった。

「莉愛、何故泣く？君にフラれて泣きたいのはこっちだぞ」

　莉愛は涙目で彼を睨んだ。

「フッてなんかいない、逆よ、貴方が好きだから、これ以上迷惑をかけたくないの」

「……莉愛」

　祐樹は嬉しそうに莉愛を抱き寄せた。