夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「私達に何人か子供が出来たら、いずれひとりに本山茶舗を継がせたいとお父さんが言っているの。祐樹さんも養子になる経緯で色々あったし、私は自分の子にそんな思いをさせたくない。世襲である必要なんてないと思う。どう思う?」

「子供より、娘の莉愛が本山茶舗に戻って社長職を継いでもいいんじゃないか?本山茶舗の将来は君が切り開いた。君こそ相応しい」

「え、私?」

「サエキは最初こそ君の手伝いがもちろん必要だが、軌道に乗ってくれば実家の仕事もしてくれて構わない。両社に籍を置いてもいいし、好きにするといい。君が外で働き始めたのは経営状況の悪化した茶舗を救うためだったんだろう?それに君は一人娘だし、いずれ継ぐべきなんじゃないかと思っていた」

「……祐樹さん、それでもいいの?」

「もちろんだ。僕も君の夫なんだから、茶舗の経営に参加させてほしいくらいだ。本山茶舗も、千堂製菓も、サエキ商事も同族グループとして経営していく道もある」

「ありがとう。本当にあなたと結婚出来て良かった。あの時は勢いでプロポーズされて、直感でこの結婚はうまくいくとか言ってたでしょ?覚えてる?」