「大量購入者がいるんだから、商売としては万々歳だ。うちは小売りだけでなく、業務用としての販売もある。値段の折り合いが難しいところだが、お父さんと話し合うんだろう?」

「お父さんは私に任せると言ってくれた」

「莉愛、来月の頭からサエキ商事へ移るぞ。これを機会に結婚を公表しよう」

「はい」

 祐樹は莉愛の左手を取ると、薬指にマリッジリングをゆっくりと入れた。ぴったりだった。

「祐樹さんも手を出して」

「ああ」

 莉愛も嬉しそうに彼の薬指におそろいのリングを入れた。

「やっと本物の夫婦になれた……」

「前から本物の夫婦だ。内緒にしていただけだぞ」

「そうかもしれないけど、ここからでしょ。やっと認められる……」