そして、祝福するとともに以前正社員にできなかったことを詫びた。

 週末に莉愛の家族も含めて食事をしようと小声で莉愛に声をかけた。

 本選の日の夜。

 祐樹は久しぶりにスワンホテルを予約していた。莉愛のためだった。

「莉愛。おめでとう」

「ありがとう」

 夜景の見える素敵な最上階のレストランだった。今日は莉愛も少しお洒落をしていた。本選だったので、スーツだった。

「部門賞をとらなかったのに、一番引き合いが多いなんて、ちょっと商品開発というコンセプトから外れているような気もしないでもないぞ」

 祐樹は莉愛に意地悪を言った。

「確かにそうだけど、私としては一番有難いところに着地したような気がするわ。私、自分がいかに美的センスに欠けてるのか痛感しちゃった。他の人の商品を見ていたら一目瞭然だった。業務用としては評価されたけど、個人客相手の商品としてはデザインの魅力に欠けるんだと思う」