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 その日も莉愛は祐樹の家にいた。会社が近いので、コンペが近い最近はこちらに泊まっている。祐樹が家に帰ると莉愛はじいっと考え込んでいた。

「莉愛、どうした?」

「あ、お帰りなさい……遅くまでお疲れさまでした。ご飯は?」

「ああ、少しだけ食べたが……莉愛はどうした?」

「私も駅前でお弁当買ってきちゃった。祐樹さんの分もあるけどどうする?」

「ああ、じゃあ少しもらおうかな」

「はい」

 ダイニングテーブルの上には試作品の入ったタッパーウエアとスケッチブックがあった。あさっては部内のコンペだ。

 食事を取りながら、彼女の様子をじっと見ていた。

「莉愛、準備はできたのか?」

「あ、うん。ねえ、沙也加さんはどうしてコンペの参加を取りやめたの?」

「まあ、パティシエと色々あったようだ。聞いてるだろ?」

「香苗さんから少し話は聞いた。別に私の商品内容なんて知られても構わないわ。香苗さんとも商品を見せあったの」

「そうなのか?どうだった?」

「とてもいい商品よ。正直私のより海外向けに考えてる。もちろん和の素材を利用していて、とてもいいと思った」

「莉愛のはどうなんだ?」

「うーん。祐樹さんには言ってないけど、私の商品は元々国内販売向けに考えていたものがほとんどなの。特に、お茶の甘くない味となると、海外で受けるとはあまり思えない。でも、本選は国内向けでもあるし、思い切ってそのまま作ることにした」

「……そうか。莉愛の好きにすればいい」