「本当に彼女が好きなんだな。それに、彼女は頑張っているらしいな。修二からも聞いてるよ」

「ああ、よく頑張ってるし、サエキ商事に移ればなおさら彼女の力を借りることになる」

「なあ、コンペだが、彼女のは抹茶の風味を生かした新しい形の商品らしいな」

「莉愛がこの会社へ契約社員として入社したときからの夢だ。やっと叶えられると寝ずに考えていた」

「そうだったのか……商品にできるといいが、まだわからないぞ」

「ああ、そのことは本人も了承してる。何しろ初めてだし、まあ難しいかもしれないな。だめなら再チャレンジをするかもしれない」

「それくらいの覚悟があるなら安心だな。サエキの叔父は彼女に少し厳しく接したらしいな。うちは優しくしてやるから早く連れてこい」

「驚いたな。姉さんは応援してくれたが、兄さんまでとは……あの時は何も言わなかったじゃないか。反対しているのかと思っていた」

「そうか?祐樹は昔から直感頼りの早とちりなんだよ。ただ、先に結婚されるのは悔しかったな」

「……兄さん……」

「言っておくが、本当の俺は、根が優しい平和主義者なんだぞ」

「あはは……それはいいや、平和主義者……あはは……」

 兄は僕をじいっと見て嬉しそうにしている。

「お前が俺の前で笑うのを見たのは何年ぶりだろう。母さんがきっと喜んでる」

「そう……だな……」

「とにかく彼女にコンペで頑張るように伝えてくれ。兄は妹を陰ながら応援しているとね」

「ああ、それを聞いたら莉愛はきっと泣くぞ」

「そうか、じゃあな」

「ああ、兄さんありがとう」