部内コンペにあと四日となった。

 結局試作をしてやめた人が二人出て、最後まで残っているのは三人だった。

 莉愛と香苗、そして沙也加。

 しかし、沙也加が試作をしたと言う話は全く聞いていない。

 どうやらアメリカの事務所でコンペに出すという話はなかったようだと祐樹から聞いた。

 つまり、沙也加が帰国のための口実にしていただけだった可能性が出てきた。

 昼休み、香苗に声をかけられて莉愛は一緒にランチをした。そして、お互いに試作品を持ち寄った。

 ふたりで話し合ったが、先にお互い試作品を見て批評し合うのも悪くないと思ったのだ。

 実は彼女がどういうものを目指しているのか、莉愛は知っていた。香苗から話を聞いていたし、莉愛も彼女に教えていた。

 莉愛にとって彼女はこの部で一番歳が近くて、話の合う人だった。

 彼女がいるからやってこれたと言っても過言ではない。

 祐樹はもちろんだが、修二にしろ所詮上司で話を気軽にできる相手ではない。愚痴もこぼせない。さすがの莉愛も限界が何度も来た。

 香苗は修二の代わりをしていたことも数度あったので、最初修二に仕事を教わり、彼のドSぶりをよく知っていた。

 莉愛が叱られているのを見て、何度も気遣って声をかけ慰めてくれた。莉愛にとって、彼女は心の癒しだった。

 香苗がエントリーすると聞いたとき、正直本当なら辞退してあげたいところだった。そのくらい、彼女に恩を感じていた。

 食事を終えるとお互いタッパーウエアを出して中身を見せた。

「わー、可愛い」

 香苗のは星や月、太陽を形作ったスナックだった。中身は日本の食材を意識して作っていた。