「祐樹の仕事は見ていたので大体わかっている。問題は僕のポジションを誰にさせるかなんだ。やらせたい人はいるんだけどね」

 莉愛は気づいた。

「彼女さん、今度一緒に完全帰国できるといいですね」

 にっこりと笑って言うと、修二は驚いたような顔をして、その後、莉愛が分かっていると気づいてはにかんだ。

「そうだな。僕も結婚の意思は大分前から固まっているんだ。こちらに彼女を戻してから正式にしようと思っている。いい機会をもらったと思えばいいかもな」

 修二の携帯が鳴った。確認した修二は、画面を彼女に見せた。祐樹だった。

「心配してるな」

 修二は笑いながら電話に出た。

「ああ、本山さんなら大丈夫だ。もちろん話したよ。沙也加さんはどうした?そうか、それは結構大変かもしれないぞ。泣きつく先は決まってる、ああ、もう一緒に戻る」

 フロアに戻った時には沙也加の姿が消えていた。

 祐樹はメールで詳しくは夜話す、何も心配しなくていいと送ってきた。莉愛は沙也加を目にしなくていいので安心した。

 悩みがあるときは仕事に限る。それにとても忙しかったので、正直彼女に構っている余裕はなかった。

 莉愛はさっそく修二について最終的な引継ぎを受け始めた。