夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「沙也加。ここはアメリカじゃない。いい加減にしろ。迷惑だ」

　バタンとすごい勢いでドアが開いた。すごい形相だった。

「祐樹。修二を味方につけたってだめよ。所詮、周りは皆私の味方なんだから……そこのあなた、祐樹をつぶれかけた実家の会社に巻き込むなんて最低よ。しかもそれをネタに結婚まで迫るなんて、許されることじゃないわ」

「沙也加、いい加減にしろ」

「うるさいわね、本当のことを言わないとわからないんじゃないの？大体、正社員になったのだって……」

「そうですね、おっしゃる通り、部長が正社員にしてくれました」

「ずうずうしい、何なの？認めるなら、早くやめなさいよ」

「沙也加、これ以上莉愛を侮辱するようならお前のことを処分するからな」

「できるものならやってみれば？本当のことをフロアの全員に話すから」

「沙也加さん。とりあえず、今はコンペ前なのでおさえてくれませんか。皆忙しいですし、沙也加さんもコンペに出るということでしたら準備も忙しいですよね」

「……そうね、コンペが終わったらはっきりさせましょう」

「ありがとうございます。私もコンペに出るので、わからないことがあれば聞いてください」

「ねえ、祐樹。あなたの所に泊まってもいいでしょ？どうせ、お母さまのおうちにいるんでしょ？部屋はたくさんあるし、いいわよね」

　莉愛は青ざめた。二人の関係を感じさせた。

「何を言ってるんだ。ホテルか、実家へ帰れ」

「今までは泊めてくれたのに、私たちのこと、彼女に隠してるの？」

　沙也加はどうだと言わんばかりに莉愛を見て得意げにほほ笑んだ。葛西が言ったのはこういうことかと莉愛は思った。