「沙也加さんはあなたが好きで、私と急に入籍したのが納得できないんでしょう。あの攻撃的な感じはあなたを取り戻しに来たんでしょ?」

「莉愛、どういうことだ……何を聞いた?」

「そんなことより教えてください。祐樹さんは沙也加さんと今はどういう関係ですか?アメリカまでついていったと聞きました。でも同僚だったんでしょ?昔も含めて本当のことを教えてください」

「誰に何を言われたか知らないが、君は勘違いをしている……沙也加とは昔から何もない。さっき言った通り、ただの幼馴染だ」

「そう思っているのは祐樹さんだけでしょう?彼女は祐樹さんが今でも好きですよね。あなたもわかっているのにそのままなの?」

「いや、告白されても付き合えないと断ってる……あいつはストーカー以上に諦めが悪すぎる」

 莉愛と祐樹の結婚の経緯は確かに理解しがたいに違いない。彼とは交際0日婚だ。

 長い間彼を思っていたであろう沙也加さんを考えれば気持ちはわからないでもない。

 でも、初対面の莉愛に最初から喧嘩腰だった。彼女の執拗な感じが気になる。普通の関係だとは思えなかった。

「彼女はあなたに会うだけの為に帰国したんですか?仕事は?」

「コンペにアメリカ事務所代表で出たいと言っていた」

「え?!」

「君が出ることを兄は知っている。おそらく、それも知らせたんだろう」

「それなら、彼女に勝てばいいだけです」

「莉愛!」

「私が負けたら潔く……」

「潔くなんだ?!いいか、莉愛。この間の夜言ったことを忘れるな」

 すると、横の部屋から言い争いの大きな声がしてきた。祐樹は振り向いて、秘書の小部屋をノックした。言い争いの声が一瞬やんだ。