祐樹は驚いて目を丸くした。

「離れろ、何してるんだ」

「あ、ちょ、ちょっと沙也加さん……ここは日本ですよ」

 フロアの人が部長の首に抱き着いている女性をじいっと見ていた。

 すると、沙也加はサングラスを外してフロアの人に手を振った。

「皆、久しぶりね。元気にしてた?」

「斎藤さん!?えー、こっちに顔出したの久しぶりですね」

「うーん、二年ぶりかな、事務所に顔出すのは本当に久しぶりよ」

 彼女は周りに寄ってきたメンバーに大きな袋を渡すとお土産よと笑った。数人が彼女に久しぶりと言いながら群がった。

「おい、修二。菫さんから何も聞いてなかったのか?彼女を叱ってもいいか?」

「いや、菫は口止めされてたんだろう。沙也加さん怖いからな。神田支社長代理も悪いだろ。お前に黙ってやったんだろう?」

「いや、神田さんじゃないだろう……父か、それとも兄貴か……沙也加がごり押ししたのか……」

「祐樹……」

「父か兄から僕のことを聞いたんだろう……それにしても……相変わらずでどうしようもない」

 修二が小声で祐樹の耳元で囁いた。

「しかし、入籍のことを知ってもまだあきらめてないのか?祐樹が沙也加さんをきちんとしないからだろ。気を持たせてるんじゃ……」

 祐樹はすごい眼をして修二をじろりとにらんだ。

 修二は一歩下がった。

 まずい、地雷を踏んだと気づいたのだが遅かった。