「余計なことなんてひとつもない。本当は知っておくべきことだもの。聞かなかった私が悪いの」

「紹介が遅れていてすまない。でも結婚自体は、佐伯の両親が了承してくれれば認めると千堂の父は話していた。ただ僕自身が千堂の家に対してわだかまりがあるんだ。それも近いうちに必ず解決させる。少しだけ待っていてほしい。尚人が何を言ったかわからないが僕を信じてほしい。大丈夫だよ」

「本当は問い詰めたいけど、内容によっては受け止めきれないかもしれない。だって、今はコンペのことで頭がいっぱい。これをやり終えて、この会社を去るときまでそのことは蓋をすることにした」

「莉愛……」

「この結婚が許されるのか、その時にわかるかもしれない」

「莉愛、何を言ってるんだ!」

「移るとき、結婚を公にするって言ってたよね」

「ああ」

「その時、誰も祝福してくれなかったら?うちの両親は気づいてる。会社のことがあるから言えないだけ。母は心配してくれているの」

 祐樹は莉愛をぎゅっと思い切り抱き寄せた。

「馬鹿だな。何があっても莉愛は離さない。誰に何を言われても離れない」

 莉愛は祐樹の身体に手を回した。

「うん。離れたくない。私、思っていた以上に祐樹さんのことが好きなの」

「僕も莉愛を愛してる。君なしじゃもう生きていけないから、離れるなんて言わないでくれ。君のことは何が何でも守る」

「あなたから守ってもらうのはもうおしまい。私があなたを守れるようになる。コンペで結果を出す」

「莉愛……」