夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「……お前、何考えてんだ?どうしてそんな隠れて急いで入籍とか、祐樹さんのせいか?」

「祐樹さんは何も悪くない。私にプロポーズしたのも私を救うためだった。だから、本当は……」

「いや、絶対違うよ」

「え?」

 莉愛は葛西が語気を荒げて言うのを驚いて聞いた。

「あの時、初めて居酒屋で会った時から、祐樹さんは本山に気があった。兄貴も驚いてた。自分から女を追いかけてるの初めて見たと言ってたくらいだ。最初から本気だったんだよ。あの人はいつも直感勝負なんだ」

「……そうね、直感だったとは言われた。よくわかんない人だと思ったわ」

「そうだよ。よくわかんない人なんだけど、すごいんだよな。正直実の兄の専務より能力はあると思う。だから、年子のお兄さんと仲が悪いんだよ。勉強も祐樹さんのほうが出来て、お母さんは祐樹さんを可愛がるし、結構バチバチだったらしい。祐樹さんは会社を継ぎたくて勉強も頑張ったらしいんだけど、結局養子に出された」

 まくしたてる葛西を見て、莉愛は息をのんだ。そしてやっとパズルが繋がったと思った。

「……そういうことだったのね」

「お前、婚約したのに知らなかったのか?兄貴も教えてない?」

「うん。葛西君へ最初に相談すべきだったね。修二さんが尚人には教えないでくれって言うから……」

「お前、知らないことがまだあるんじゃないか?沙也加さんのことは?」

 私は知らない女性の名前が出てびっくりした。

「知らない。誰なの?」

「祐樹さんの幼馴染だよ。一つ下なんだけど、父親同士が親しくて家族ぐるみで昔から側にいるんだ」