夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「確かに、見た目も大切だが、味が大事だ。叔父さんもよく言っているけど、たまに食べたくなる味が大切らしいぞ」

「おやつは間食って言うじゃない。食のひとつだけど、ライバルがいっぱいいる。たまに食べたくならないと選んでもらえないね」

「俺はほっとする味が欲しくなる」

「なるほど……やだ、葛西君たらいいこと言うじゃない!」

「なんだよ、その言い方……ま、人で例えると本山みたいな?」

「え?」

「俺にとってほっとするのは本山かもしれない。お前の前では恰好つけたくてもそれも許してもらえない。正直素のままだ。でもこうやって話すとほっとする。なあ、本山、俺と付き合ってほしい」

「……え?あ、えっと……びっくりした……」

「そんなに驚くことか?バレバレだったはずだけどな」

「葛西君。実はね……」

「あー、ちぇ、結局すぐ断るのか」

「え?」

「やっぱりあの人に勝てるわけがないからな。でも悔しいよ。俺の方がずっと前からお前を知ってる。長い時間を過ごしてきたのにな」

「……え、葛西君知ってるの?」

「知ってるのって本山が好きなのは祐樹さんだろ?」

「……え!」

 莉愛は一瞬どうこたえるべきか迷った。彼には本当のことを自分から言うべきだと思ったのだ。