「え、祐樹さん、あれを一度見ただけで覚えてるの?」

「もちろん」

「一回しか見せてないわよね」

「僕を誰だと思ってる。君を正社員にしようと決めたのもこのスケッチを見たからだ」

「ありがとう、嬉しい。あれはね、いったんお蔵入りにした」

「は?お蔵入り?どうして……」

「海外では理解されないかもしれないと思ったからよ。ここひと月、新しいあちらの商品をUPしたり、商品に含まれる成分を入力したり、そんなこともしたのは無駄じゃなかった」

 祐樹はにっこりして、莉愛を見た。

「さすが莉愛。どうしてやらせていたか気づいたんだな」

「ええ。おかげさまでどういうものがあちらで多いのかよくわかったの。デザインや大きさ、少し考えようと思って……」

 祐樹はスケッチブックをぱらぱらとめくりながらとあるページで手が止まった。

「莉愛、これは?」

「うん、これは最近書いたもの。どうかな?」

「なるほどね。いいんじゃないか。あちらはスティック状のものが本当に多いんだ」

「抹茶の苦みをつまみにできるかもしれないと思ったの。スナック菓子にそういうものもあるでしょう。それと同じような考え方ね。渋みのない濃茶のうまみと苦みをなんとかできたらいいな」

「……莉愛」

「はい」