夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「彼女の残業はしばらくしょうがないんだよ。よってカウントに入ってない」

 修二がチロリと莉愛を見て言った。莉愛は得意げに言った。

「修二さん、私今日はなんと終わりましたよ」

「ほー、それはすごいじゃないか。ご苦労さん。思ったよりずっと早く出来るようになったな」

「本山頑張ってますよね。僕も褒めていたところです。修二さんもたまには褒めてあげたらいいんじゃないですか?」

「優しいな、須藤君。涙でそうだよ」

「本山には優しくしようと思ってね。昔の葛西さんを見習ってさ」

「須藤どういう意味だ?僕が誰に優しくした?」

「菫さん相手ですよ。いや、あれは優しいどころじゃない、下心が丸見えでしたね。あっという間にふたりとも国内から消えてしまって、ああいうのを囲い込みって言うんですよ」

「お前、余計なこと言うな」

 修二が真っ赤になって須藤を叩いた。すると、部長室から祐樹が出て来てこちらをじっと見た。

「本山さん、ちょっといいかな……」

 手招きしている。

 須藤は黙ってじいっと祐樹を見た。

「本山さんをこんなに急いで育てていたのには訳があるのさ、須藤」

 修二が須藤の肩を抱いて話し始めた。

「僕が来週あっちに帰るから、あいつの秘書業務をその間彼女にやらせるつもりなんだよ」