夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

　潮見部長にも、尚人にも内緒にしている。修二が尚人は顔や態度に出ると言ったからだ。

　それより莉愛は仲良しの美穂にも話せないのがつらかった。

　それには理由がある。

　実は社内で莉愛が国内部門から急に正社員配属になった経緯について憶測が飛んでいる。

　海外事業部は英語のできる人やエリートが多い。おかしいというのが皆の意見だ。当たり前だ。

　そこで彼と結婚したと知れたら益々ゴシップが流れて、莉愛にとってはマイナスでしかない。

　言い訳をどうしたらいいか莉愛自身自分でもわからないくらいだ。

　仲良しの美穂も莉愛が正社員として戻ってきたことを喜んではいたが、驚いてもいた。当たり前だ。

　そしてどうして莉愛が海外事業部に呼び戻され正社員となったのか聞かれた。葛西のお陰なのかとしつこく聞かれた。

　美穂も正社員になりたがっていただけに、莉愛は心苦しかった。

　祐樹との関係はまだ話せないが、お茶を使った菓子に海外展開を狙った部長が興味を持ってくれたようだと説明した。

　以前の知り合いの同僚にも質問攻めにあった。もしかして英語が出来るのかと会うたび色々質問される。

　正社員になったのはどうしてか、潮見部長はだめだといってたのに、どうしてなのか、と昼休みやエレベーターの中で会う人に問い詰められた。

　葛西も色々言われているらしく、迷惑をかけているらしいことがわかってきた。

「まあ、正社員になったならよかったよ。俺は何もしてやれなかったからな。お前のことで何を言われようと後ろ暗いことは何もない。全部きちんと説明しているから安心しろ」

「ありがとう」

　だからこそ、英語をこうやって必死で隠れて勉強しているのだ。