夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「あー、そういう意味なんだ……なるほどね。あっ、また間違えた……またいつの間にかカナ表示になっちゃってる。こっからやり直しだ、あーん」

 頭を抱えている莉愛に修二が言った。

「またか……いつになったら慣れるんだ?でも最近はすぐにできないとようやく言わなくなってきたな。とにかくここに来た以上は、できるまでやってもらうよ」

「修二さん……なんか本当に最初の印象とまるで違いますね。絶対皆には見えない透明な角がここにはえているんだ」

 莉愛は角を指で頭の上に作った。修二はメタルの眼鏡を抑えて、莉愛を見た。驚きもせず、笑ってもくれない。莉愛は諦めた。

「僕が鬼だって?そんなことは昔からよく言われる。基本仕事での僕は鬼だよ。特に君は弟と親しかったから、あいつのイメージで僕のことも甘く見てるかもね」

「別に……そういうことじゃないんですけど。葛西君や祐樹さんが言った通り……本当にドSだわ」

 小さい声で最後を付け足した。

「なんだって?」

「あ、いえ。なんでもありません」

「じゃあ、とっととやって。午前中にこれを終えないと次が午後から教えられない。僕は二時から会議だからね」

 莉愛は未だに自分がここにいることが不思議でならない。借りてきた猫のような居心地の悪さがあるのだ。

「あの、いつまで私はここにいるんですか?この部長室の外にいる方達とはお仕事しないんですか?」

「ああ、あっちに君がいっても今の状態だと迷惑この上ない。邪魔なだけだからね」

 相変わらずはっきり言いづらいことを言ってくれる。莉愛は最近この毒舌に慣れて来てしまった。

「じゃあどうして私をここに配属したんです?」