祐樹は莉愛を今住んでいる母の実家ではなく、有名なスワンホテルに連れてきた。

 海外の賓客も多いこのホテルは白亜のホテルだ。女性には非常に人気が高い。それもそのはず、ここは女性オーナーが経営している。

 祐樹は仕事柄、どうしても海外のお客様をご案内することが多い。

 そのため、その筋にはとても有名なこのホテルを利用するようになった。ここは従業員が皆英語も堪能だ。

 仕事で一度使ったがとてもいいホテルで自分も気に入った。それ以降、プライベートでも何度か利用した。

 ここの最上階のレストランで食事をしたときに、プロポーズの場面に居合わせた。

 自然な雰囲気が良くて、周りも暖かい目で見守っている。レストランの照明の使い方もロマンチックという言葉がぴったりだった。

 祐樹もいつか、彼女が出来たら連れてきたいと思い続けていた。

 特に、ここのスイートは新婚のカップルに有名で、莉愛との初夜はここにしようと決めていた。莉愛の為にだいぶ前から数日間部屋を予約していた。

「え、どうして……ここ?お母さまのご実家に帰らないの?」

 祐樹は莉愛と手を繋いで、チェックインするとエレベーターホールへ向かった。

「今日は初夜だと言っただろう。記念日にしたいから特別ところで過ごすつもりだったんだ」

 莉愛は美しいホテルの内部に目を奪われた。

「もしかして……ここまで計画してたの?」

「まあ、ね。気に入ってくれると嬉しいよ。このホテルは来たことないだろう?」

「ええ。初めて入った。すごいわ。連れてきてくれてありがとう」

 スワンホテルと言えば高級ホテル。白亜の大理石、日本なのに海外のような場所だと莉愛は噂で聞いていた。

 お客さんは外人さんが多い。半数以上のようだった。

 部屋は驚くことにスイートだった。震える足でそこに入ると莉愛は歓声をあげた。

「素敵、真っ白なのね。この金色のラインが全体に入っている。白鳥が二羽いる。つがいなのかな、可愛い。素敵なベッド」