祐樹は得意げにカバンから婚姻届を出して見せた。

 莉愛は驚いた。いつの間にか、二人の母がそれぞれ証人になっている。

「……これ、いつの間に?どうして……」

「さあ、どうしてかな?決めたことはやり抜く主義でね。仕事同様、素早く正確にがモットーだ」

「祐樹さん……」

 莉愛は呆気に取られて口をあんぐりと開けてしまった。

 祐樹は決心がつかずぐちゃぐちゃ言う莉愛を一緒に役所へ連れて行き、窓口で莉愛の手を握って婚姻届を提出してしまった。

 そしてすぐさま莉愛の両親に、祐樹自ら入籍を報告するため電話をした。サエキの両親にも電話した。

 莉愛は奥様から娘が出来て嬉しいと言われてしまった。

 祐樹と知り合ってからというもの、ジェットコースターのような速さで物事が進んでいく。

「これでよし。佐伯莉愛さん、夫婦としてこれからよろしく」

「どうしよう、私……」
 
「奥さん、さっそくだけど、泊る準備はしてきたよな?」

「え?あ、うん、言われたから一応……」

 祐樹は佐伯の家に泊まるかもしれないからその準備をするように莉愛に言っていた。

 ここに来て莉愛は嫌な予感がしてきた。まさか、そういうこと?

「あ、あの……その、もしかして……」

「もちろん、今晩は記念すべき初夜だ。僕としては、君を丸ごと全部もらいたい。ずっと莉愛が欲しかった……だめか?」