First Last Love


枝川が疑問を(てい)したところで、俺は人差し指で自分の耳をちょんちょんと差した。

ふたりは息を飲む。俺の意図にすぐ気づいたのだ。盗聴器が仕掛けられている恐れがある。

「あっちのほうがガラス張りのここよりは安全か。健司は枝川と違って飲みに行くことも多いしな」

ナツが不自然な間を作らずに返答してくれる。

「へへへー。だって俺もうすぐ結婚するしー。外で飲むより家がいいしー」

 枝川は大学時代からつき合ってきたサークル仲間のリカちゃんと同棲中で、もう入籍も決まっている。

「聞いてねえっーつーの!」

 ナツよりは遅いけど、まだ二十六だぞ、枝川。どうして俺の周りはこう結婚が早いんだ!

「まあ、今どうのこうの言っても始まんないし、せっかく夜中に集まったからラーメンでも食って帰るかー。いや店やってねえかー」

 二人とも盗聴器があるかも知れないことを考慮し始めてから、いきなり話題と口調が軽くなっている。

 ナツがまた寒そうに両腕を高速でさすっている。よほど急いで来たんだろうな。だけどよくアウターもなしに外を歩けたな。