「一颯には新しい家族が増えたよ。頼りにしてほしい」
鏡台の前の椅子から立ち上がり、一颯をできるだけ加減して抱きしめる。
かっこ悪いから、がっつきたくないと思っているのに、どうにも手が出がちだ。
サラサラの髪を撫でていると幸福感と欲望が同時に駆け上ってくる。
あの嵐の夜じゃないけど、家に入った時から、ベッドに連れ込みたい衝動をずっと抑えている気がする。
今の状況が幸せすぎて信用できないのだ。
一颯を諦めるしかないんだ! と自分に言い聞かせてきた時間が辛すぎて、長すぎて、しつこく尾を引いている。
身体で確かめないと夢じゃないと信じられない。
「もう髪、乾いたよ。ありがとな。一颯も風呂いってこいよ」
「うん。ありがと」
一颯は風呂の準備をして脱衣所に入って行った。
俺と色違いの水色のパジャマで風呂から出てくると、一颯はソファに枕や布団を運び、自分の寝床を整え始めた。
「何でそんなことしてんのさ。一緒に寝ようよ。あ、狭いと眠れないタイプ? シングルに二人だしな。ロスに行くまでまだ時間あるからでかいベッド、ポチるか」

