「一颯……」
声にまではなっていない、唇の動きで目が覚めたらしい。
ここはどこだ?
ベッドに寝かされている? 病室……?
断片的な記憶が脳裏を掠める。
俺はおそらく品川にナイフで刺された。
閉まり切っていないエレベーターの後ろに品川が倒れ込み、ドアが再び開いてくれた。
一颯が助けを求める声。
周りの人間の悲鳴。
ホテルマンの大声。
俺の傷を押さえ、泣きながら止血をしてくれている一颯。
救急車のサイレン。
そのあたりまでの記憶がおぼろにある。
そして、俺は死ぬのだ、と確信もしていた。
シャツが真っ赤に染まるほどの血が流れて助かるわけがない。
夢か現実か、病院での記憶もある。
死ぬ前に一颯に伝えなければ、謝らなければ、と、何度も医者に彼女を呼んでくれるように頼んだ。
だから俺は告げたはずだ。
想いは伝えたはずだ。
あれは本心じゃないと。
一颯が好きだと……。
俺、まだ生きてるのか?
間に合ったんだろうか。
視線を、天井から横になっている身体に這わせて動かし、左側で止まる。
え……一颯?

