品川は、遺言書を早く探し出して抹消してしまおうと躍起になった。
わたしの記憶が戻らないようにすることと同時に、あの遺言書を破り捨てるために「お前たちの実家は焼失した」と嘘をついたのだ。
決心がついた。
わたしは両親の遺言を守り、品川との関係は断つと決めた。
育ててもらった恩はある。たくさんお金もかけてもらった。
でも今から思えば、要所要所の洗脳はあったような気がするのだ。
健司が「あいつ、おかしくないか?」といぶかしんでいたように、催眠術のようなものを感じた事は確かにある。
そしてわたしに実行するよう半ば強制してきたCanalsの情報漏洩は、犯罪行為だ。
承諾した時のことをわたしは覚えていない。
覚えているのは、自分がそれを承諾したという事実のみ。
両親の死亡事故を起こした当事者と、Canalsの副社長の名前が偶然同じだった事を、またとない好機だととらえたんだろう。
両親の仇を討つのだと焚き付けられ、わたしは尋常の範囲を逸脱した憎しみを抱いてしまったような気がする。
いくら両親を失って悲しかったとはいえ、なぜ犯罪行為を起こそうとするほどの気持ちを持ったのか、今となってはわからない。
姪に犯罪を勧める叔父。
父の心配は的を射ていた。
叔父に対していい感情を持っていなかった健司は、品川の瞳の動きや所作に飲み込まれる事はなく、催眠術のようだ、と判断したのかもしれない。
わたし自身、情報漏洩以外にもなぜ自分が承諾したのかわからない事案も多く、怖いと感じるようになってもいた。

