「どう? やっぱ、月城さんもそう思う? 『本当の事を言えば一颯は無理に努力を始めるかもしれない。知らなければ、事故の記憶からはだんだん遠のいていくのに』って言ってたよ。『そのために自分は一颯のそばにいちゃいけないって』」
「……それは違う」
「だよね。決めるのはお前じゃなくて月城さんだよ、って健司には忠告したんだけど、よっぽど月城さんを傷つけるのが怖いんだよね」
わたしが席を替わった理由はまぎれもなく白衣観音で、それは健司が衝撃を受けたものだったからどうしても見たかったのかもしれない。
というか……そうだった。
思い出してきた。
でもそんな過去のことで、今現在、これだけ好きな人が離れていこうとしているなんて、悲劇以外のなにものでもない。
わたしは白衣観音のスライドで倒れはしても、健司を見て、一緒にいて、事故を思い出す事なんてなかった。
「健……副社長はーー」
「健司でいいよ。もうここまでプライベートな話だからさ」
「ちゃんと話しあえば、また元に戻れるでしょうか?」
「難しいのは難しいから覚悟して。あいつ、決めるとテコでも動かないとこあるから」
テコでも動かない。……嫌だ。

