First Last Love


「健司にも言ったけど、それは不幸な偶然の重なり合いだよね? ちょっと何か条件がずれてたら、違う結果になってた。そうやって健司も月城さんも、自分のせいだ、って思って自分の首を絞めるのはやめないと」


「は……?」

「まあさ。俺も似たような事が昔いくつもあって、その度に健司に世話になってるから、当事者は見えないもんなんだって事は理解してるつもり」

「そう……なんですか」

そこで一ノ瀬社長は、小さく深呼吸をし、居ずまいを正したような気がした。

「月城さんが見たかったものは白衣観音(びゃくいかんのん)だよ。真っ白な巨大観音像。上信越自動車道のある位置から、山の上に人が立ってるように見えるらしい。で、それがすごい衝撃、って小学校で健司が騒いだんだってさ。月城さんはそれを聞いてたか。もしくは直接教えられたか」


「……」

「月城さんも、当時から健司の事が好きだったんでしょ? 好きな人にそんなにインパクトを与えたものを見たがるって、至極自然な事だよね」

 わたしは記憶が勝手に逆回転を始める感覚を味わっていた。

白衣観音。

そう……確かに当時、健司が、村上が……学校で友達に「すげーすげー」と興奮して話していた……気がしてきた。

「健司は、自分と一緒にいると、月城さんが事故の記憶から抜け出せないと信じ込んでる。一度、白衣観音のスライドで倒れた事があるんだってね。自分と一緒にいると、せっかく取り戻した月城さんの人生をあの事故に引き戻すと、信じ込んじゃってんの」

「……」