月城はこの応接に入ってから努めて下を向き、あきらかに品川の視線を避けている。
けれど今、思わず顔を上げた月城のその双眸を、まるで捕まえるかのように、品川は覗き込んでくる。
虹彩の輪がはっきりしたグレーの瞳に、慈悲のような胡散臭い笑みを含み、相手の心の奥までするすると入り込もうとする。
「叔父さん、わたし……」
うわずったような声に、正常な状態から外れつつある月城の精神状態が垣間見えた。
「月城っ! 約束だぞ」
俺は隣にいる月城の手首を思わず強く抑えた。月城が我に返ったようにびくりとした。
「副社長、姪に乱暴は困りますよ」
「乱暴なんかじゃないです! 失礼な!」
今度は月城がいきりたつ。
「叔父さん、わたし、今は叔父さんが信じられないんです。ごめんなさい。少し時間をくれませんか?」
そこで品川は立ち上がった。
「いいよ一颯。大切に育てた一颯が、わたしたちを裏切ってCanalsに着くようなことがあるはずもない。でもどこに住んでいるのか、場所だけは教えておいてくれないか? 心配だよ」
「うちの社の借り上げ社宅です。社外秘です」

