車を雑に路駐すると、村上くんは乱暴にドアを開ける。わたしも素早く降りた。
車に鍵をかけると村上くんは堤防を飛び降りて、その少女のいる砂浜に向かって走り出す。
「夕凪ー!」
その声に少女が振り向いた。
「えっ。お兄?」と口が動いたような気がする。
砂浜に降りる階段が遥かかなただ。
ずいぶんな高さのところを、恐怖心を抑えてどうにか飛び降りる。
足を砂に取られる以前に、走るスピードに全くついていけず、わたしは彼からだいぶ遅れてその場に到着した。
「もうっ! どんだけ心配したと思ってんだよ! 傷心旅行ならそう言ってから出てけっ。変な気起こしてんじゃねーかってもう……」
姿を見て安心したのか、崩れ折れそうになった体を折り曲げて、両膝に両手をついている。
「ごめんなさあーい」
なんだか呂律が回っていないと思ったら、あぐらをかいた夕凪ちゃんの周りには、チューハイの缶がいくつも転がっていた。
「ああ、そうだ。とりあえず身柄確保した、って親に連絡しないと」
村上くんはスマホを取り出し、夕凪ちゃんに背を向けて電話をし始めた。

