「えっ。でも夕凪ちゃん大学生ですよね? 飲み会とかじゃ……」
「いや、普段はそうなんだけど、ここんとこ……。いや、もうな。一週間前につき合ってるやつと別れたんだよ。それから大学も行かないで家に閉じこもってたと思ったら、ふらっと出てってこの時間まで帰ってこないって。連絡もつかない」
わたしに隠すのが面倒になったのか、不安からか、真実がそのまま口からころがり出てしまっている。
「あてはあるの? どこにいるか心当たりは?」
「ないよ。でも探さなきゃ」
焦りが加速し、エレベーター前のリノリウムの床をつま先で小刻みに蹴っている。
「ちょっと待ってて! 十秒で戻るからエレベーター来ても乗らないでね!」
わたしはそう断ると、上方階に向かうボタンを拳で二度連打して、そのまま踵を返した。
「月城っ?」
わたしはロッカーまで走った。人差し指を押し当ててそれを開くと、今入れたばかりのパソコンを取り出して抱え、エレベーター前に走った。
エレベーターの上下ボタンを見ると下方に向かうケージはいってしまった後だった。
この非常事態でも、わたしを信じて乗らないでいてくれたことが嬉しい。

