First Last Love


 わたしと同じようにガラス張りの副社長室に視線を向けている。
これは秘書として当たり前の行動? 
違う理由のような気がするのは思い過ごしだろうか。

「あーもう、さすがに……」

 急かされてもいないのにこれ以上仕事をするのは不自然に思えて、わたしはパソコンの電源を落とす。

フラップを閉じ、デスクを片付ける。

パソコンを自分のロッカーに運んで静脈認証で開けるとそれを中の棚に置き、代わりにハンガーに掛けてあったロングコートを取り出した。

そして籠に入れている荷物を取りにもといた席に戻った。
そこでちらりとまた副社長室の中を確認してしまう。

「え……?」

 村上くんが、音がするほど乱暴に立ち上がったところだった。

手には社用携帯が握られている。
社用携帯を切ると、今度は副社長室内にあるロッカーの中の通勤用リュックをあさり出した。

ロッカーには私物を入れているようだから、あさっているのはおそらく私用の方のスマホだ。

スマホを取り出してどこかに電話をかけている。副社長室の中で、いや、オフィスの中で私用のスマホなんか触っているところを初めてみた。