First Last Love


 「叔父さんは養子なの。品川ゼミナールは、もとは叔母さんの父親が始めた塾」

当時、品川ゼミナールがどの程度の規模だったのかはわからないけど、結婚して養子に入りその塾をもらったわけだ。
うちも三度、吸収合併を持ちかけられ、断っている。

調べたわけじゃないが、幾つもの会社をそうやって吸収して大きくなってきたんだろう、と想像できる。

「もう……。Canalsに迷惑かけない。退職届は月曜日でいい?」

 俺があれこれと考えすぎて、すっかり黙ってしまったからか、月城は控えめな声で(ささや)いた。

「いや、Canalsは退職するな」

「どうして? これだけのことしたんだよ? わたし、訴えられても仕方ない」

「月城は悪くない。利用されてたんだ。もっと怒れ! 叔父さんに怒れよ」

「だって……。両親を亡くしたのが中二だよ? そこから育ててもらった時間は覆らないよ。おじさんがいなかったら、わたしと二葉は施設に行くしかなかった」

「施設の方が良かったかもしれないとは思わないのか? 少なくとも実家の全焼なんて嘘はつかれずに済んだ。家があれば一時的に失った記憶を取り戻すのは簡単だったに決まってる。十二年の空白があいても手掛かりさえあれば思い出せたんだから」

「……」