First Last Love


えっ……。とびっくりする。自分でもこんな小さな傷のことは忘れていた。見ると村上くんが巻いてくれたハンカチがまだ左手にある。

「ああ、それですか?」

 夕凪ちゃんはハンカチの巻かれたわたしの左手に視線を落とした。そして財布から絆創膏を出す。
わたしの左手のハンカチを取ると、手際よく絆創膏を貼ってくれた。

「ありがとう、ございます」
「いえいえ」

 村上くんが手にしたままだった車のキーをさらって、厚底のスニーカーを履き始めた。

そのまま、ひらりと手を上げると、玄関を出てしまう。ずっと軽口を叩いていたわりには、背中は俯きがちで微妙に肩の線が落ちていたように思う。

「夕凪ちゃん、いつもあんな感じ? 無理に明るくしてたみたいで……気になる。村上くんになんか話があったんじゃないかな」

「月城よくわかるな。確かにあれはちょっと()ねてるな。いいよ、あとで埋め合わせはする」
「うん、それがいいよ」

「あいつの大学ここから近いんだよ。だから昨日、ミケとチャピの世話を頼んだ。あいつに懐いてるからさ。最悪、朝方まで四十二階の多目的ルームで張るつもりだったから」
「……なるほど」

奇妙な感覚だ。日付をまたいでからの数時間で、村上くんの印象が天と地ほども変わっていて、しかもわたしは以前からこんな関係だったかのようにすっかり順応している。

 リビングには巨大な長方形のローテーブルを囲んで、布張りのソファが三方向に置いてある。ここに集まって会議もできそうな雰囲気だ。