First Last Love


値段は高いが、これでキャリア採用の優秀人材に好印象を持ってもらえるなら、安いもんだ。

 俺はカードで決済し、美容師さんに荷物の番号札を渡した。美容師さんは番号札と引き換えに俺の斜めがけカバンを出してくれる。

 背後のクローゼットを開け、俺の黒のダウンジャケットもハンガーから外そうとしてくれる。

「これでしたよね?」
「そうです」

 当時奮発して買ったお気に入りのダウン。人とは被りにくいブランドだ。
 俺はそれに腕を通し、斜めがけのカバンを下げた。

なんだかいつもと着心地が違うような気がしないでもない。右肩の下を確かめると、もう数年愛用したブランドのロゴマークがちゃんと入っている。

髪を切って襟足がすっきりしたからだろうか。

「ありがとうございましたー。またこちら、よろしくお願いします」

 店の外まで見送りに出てきてくれた担当美容師さんは、両手で自分の名刺を差し出してきた。